中小企業省力化投資補助金(一般型)は、カタログ注文型と違って事業計画書を審査し、評価の高い計画から採択する補助金です。審査には書面審査の評価項目に加えて「加点」の仕組みがあり、要件を満たす取組を行う事業者は有利になります。

この記事では、第8回公募要領(2026年8月・2026年9月18日改訂)に基づいて、加点項目10個の要件と必要書類、加点とは別に審査で考慮される項目、そして賃上げ加点を取ったあとに要件を達成できなかった場合の減点を整理します。

制度全体は省力化投資補助金とは?カタログ注文型と一般型の違いを解説、審査の軸になる「オーダーメイド設備」の考え方は省力化投資補助金(一般型)の「オーダーメイド設備」とは?をご覧ください。

審査の全体像:加点は「上乗せ」であって土台ではない

公募要領の審査は、次の構成になっています。

  1. 補助対象事業としての適格性(対象事業・対象者・申請要件・補助率等を満たすか)
  2. 技術面(省力化指数、投資回収期間、付加価値額、オーダーメイド設備の4観点)
  3. 計画面(実施体制・財務状況、スケジュールの妥当性、賃上げ目標の実現可能性、会社全体へのシナジー)
  4. 政策面(地域経済への貢献、事業承継、イノベーション、関税影響など)
  5. 加点
  6. 減点
  7. 必要に応じて口頭審査

加点はこのうちの1つにすぎません。公募要領は「より優れた事業計画書を提出した者を補助金交付候補者として採択します」としており、土台になるのは事業計画そのものです。公募要領に各加点項目の配点の記載はなく、「加点を何個取れば採択される」という考え方はできません。

加点項目10個の要件と必要書類

公募要領5-2の加点項目は10個です。「加点項目の一部については、エビデンスとなる添付書類を提出いただき、審査の結果、各要件に合致した場合にのみ加点されます」とされています。

No. 加点項目 要件 必要書類・手続き
1 事業承継又はM&Aを実施した事業者に対する加点 過去3年以内に事業承継(株式譲渡等)により有機的一体としての経営資源(設備、従業員、顧客等)を引き継いだ事業者。株式譲渡または相続・贈与により法人と個人間で承継した場合、または同一法人内で代表者交代したものに限る 事業承継またはM&Aを実施したことがわかる確認資料
2 事業継続力強化計画/連携事業継続力強化計画に対する加点 有効な期間の事業継続力強化計画(連携型含む)の認定を取得している事業者 受付番号(0から始まる半角数字10桁)と計画の実施期間を応募申請時に入力。紙申請で認定を受けた場合は「紙申請」と入力
3 成長加速マッチングサービスに登録している事業者に対する加点 「成長加速マッチングサービス」で会員登録を行い、挑戦課題を登録している事業者(応募締切日時点) 登録のみ(応募締切日時点で完了していること)
4 地域別最低賃金引き上げに係る加点 2024年10月から2025年9月までの間で、「当該期間における地域別最低賃金以上〜2025年度改定の地域別最低賃金未満」で雇用している従業員が全従業員数の30%以上である月が3か月以上ある事業者 【指定様式】地域別最低賃金引き上げに係る要件確認書
5 事業場内最低賃金引き上げに係る加点 2026年6月と応募申請直近月の事業場内最低賃金を比較し、「全国目安で示された額(55円)」以上の賃上げをした事業者 【指定様式】事業場内最低賃金引き上げに係る要件確認書
6 えるぼし加点 女性活躍推進法に基づく「えるぼし認定」を受けている事業者 公募要領上、添付書類の指定なし
7 くるみん加点 次世代育成支援対策推進法に基づく「くるみん認定」を受けている事業者 公募要領上、添付書類の指定なし
8 省力化ナビ加点 応募申請締切日までに、中小機構「省力化ナビ」を活用し、生産性向上の知見を確認していること 省力化ナビ活用時に、本事業の申請に用いるGビズIDプライムを入力する(申請時のGビズIDプライムと一致している必要がある)
9 健康経営優良法人加点 健康経営優良法人2026に認定されている事業者 公募要領上、添付書類の指定なし
10 生産性向上支援センター利用加点 生産性向上支援センターによる支援を受け、「生産性向上取組計画書」の作成が完了し、応募申請時に同計画書を提出した事業者 生産性向上取組計画書

事業継続力強化計画の加点(No.2)は、申請システムでの実施状況の振り返り報告や、複数回の認定を取得することで加点が上乗せされるとされています。

生産性向上支援センター(No.10)は、2026年4月1日から全国47都道府県の「よろず支援拠点」内に設置された公的支援機関です。支援を希望する場合は近隣のよろず支援拠点に問い合わせる仕組みになっています。

加点項目を3つに分けて考える

10個の加点項目は、準備に必要な時間とリスクで3つに分かれます。

すぐに取り組めるもの(No.3、No.8)

成長加速マッチングサービスへの登録と挑戦課題の登録、省力化ナビの活用は、いずれもオンラインで完結します。ただし、どちらも応募締切日までという期限があり、省力化ナビは申請に使うGビズIDプライムと同じIDで活用する必要があります。GビズIDプライムの取得自体に一定期間かかるため、申請の準備と並行して早めに済ませる項目です。

認定や計画の作成が必要なもの(No.2、No.6、No.7、No.9、No.10)

事業継続力強化計画、えるぼし、くるみん、健康経営優良法人は、いずれも各制度の認定を受けている必要があります。申請から認定まで時間がかかるため、公募締切から逆算して間に合うかどうかを最初に確認する必要があります。生産性向上支援センターの利用も、支援を受けて計画書を作るまでの日程を見込んでおく必要があります。

事実関係で決まるもの(No.1、No.4、No.5)

事業承継・M&A、地域別最低賃金引き上げ、事業場内最低賃金引き上げは、過去の事実や現在の賃金水準で決まります。該当するかどうかを確認書や証拠資料で示す形です。

このうち賃上げに関する加点(No.4、No.5)は、取ったあとの義務が重いため、次の減点の仕組みとあわせて判断する必要があります。

加点とは別に「審査で考慮」される項目

加点項目のほかに、公募要領の書面審査には「審査で考慮する」と書かれた項目があります。加点の表には載っていませんが、評価に影響します。

項目 公募要領の記載 提出するもの
カタログ掲載カテゴリの製品 製品カタログに登録されているカテゴリに該当する製品を一般型で導入する場合、審査の際に一部考慮する なし(ただし、そのまま導入するのではなく、導入環境に応じて構成が変わる場合や複数を組み合わせる場合に限って一般型の対象)
アトツギ甲子園 アトツギ甲子園ピッチ大会出場者は審査で考慮する なし
イノベーション製品 革新的で優れた省力化技術を持つ中小事業者の製品を導入する取組。製品の革新性や製造元が中小事業者であることを示す追加資料を提出し、認められた場合に審査で考慮する 導入予定の機器装置についてのカタログや説明資料(考慮を希望する場合は必ず提出)
米国の追加関税措置の影響を受ける事業者 事業内容がサプライチェーンの省力化に広く寄与することが期待できる等、関税影響への対策として大きな効果が期待できる場合に審査で考慮する 【指定様式】事業計画書(関税影響を受けている申請者用)。任意で、サプライチェーンを俯瞰する企業との取引実績がわかる書類や、同企業が省力化に広く寄与する計画と認める書類

これらは「加点」ではなく、事業計画の評価の一部として扱われるものです。

減点:加点を取って未達だと18か月の大幅減点

公募要領には加点の裏側として、減点が2つ定められています。

加点項目要件未達事業者

中小企業庁が所管する補助金において、賃上げに関する加点を受けたうえで採択されたにもかかわらず、申請した加点項目要件を達成できなかった場合、効果報告等において未達が報告されてから18か月の間、中小企業庁が所管する補助金への申請にあたって、正当な理由が認められない限り大幅に減点されます。

対象となる補助金は、省力化投資補助金だけではありません。公募要領は次の補助金を挙げています。

  • ものづくり補助金
  • IT導入補助金
  • デジタル化・AI導入補助金
  • 持続化補助金
  • 事業承継・M&A補助金
  • 中小企業成長加速化補助金
  • 事業再構築補助金
  • 省力化投資補助金
  • GoTech事業(成長型中小企業等研究開発支援事業)

つまり、この補助金で賃上げ加点を取って未達になると、翌年以降に持続化補助金やものづくり補助金を申請するときにも影響します。「正当な理由」として除かれるのは、災害を受けて事業に著しい損失を受けた場合など、やむを得ず達成できなかったケースです。

過剰投資の抑制

特定の期間に類似のテーマ・設備等に関する申請が集中している場合、一時的な流行による過剰投資を誘発するおそれがあるとして別途審査が行われ、過剰投資と判断された申請は減点されます。「今これが流行っているから」という理由だけで設備を選ぶ計画は、この観点でも不利になります。

賃上げ加点を取る前に確認すべきこと

賃上げに関する加点(No.4、No.5)は、要件に該当していれば取れるように見えます。しかし一般型には、加点とは別に基本要件としての賃上げ(1人当たり給与支給総額の年平均成長率+3.5%以上、事業場内最低賃金を地域別最低賃金+30円以上など)があり、未達の場合は補助金の返還義務が定められています。

さらに書面審査の計画面では、補助事業の完了を待たずに実施する「足下の賃上げ」も評価されます。公募要領は、応募申請時の直近決算期から基準年度までの1人当たり給与支給総額の年平均成長率が物価上昇率を上回る程度の賃上げが達成されない計画は「審査上大幅に不利になる」とし、足下の賃上げは採択後交付決定までの間に従業員への表明を必須としています。

賃上げの加点を検討するときは、次の順で確認することをおすすめします。

  1. 基本要件の賃上げを、事業計画期間を通じて続けられる資金計画になっているか
  2. 足下の賃上げを、採択後すぐに従業員へ表明できるか
  3. そのうえで、加点の要件(地域別最低賃金近傍の従業員比率、事業場内最低賃金の55円以上の引き上げ)に該当しているか

加点は採択の可能性を高めますが、未達になれば18か月にわたって他の補助金にも影響します。上限額や加点の数で判断せず、数年先の賃金水準を自社の収益見通しと照らして決める必要があります。

まとめ

  • 一般型の加点項目は10個。すぐ取り組めるもの(成長加速マッチング、省力化ナビ)、認定や計画作成が必要なもの(事業継続力強化計画、えるぼし、くるみん、健康経営優良法人、生産性向上支援センター)、事実関係で決まるもの(事業承継・M&A、最低賃金引き上げ)に分かれます
  • 加点とは別に、カタログ掲載カテゴリの製品、アトツギ甲子園、イノベーション製品、関税影響が「審査で考慮」されます
  • 賃上げ加点を取って未達になると、18か月間、中小企業庁所管の他の補助金でも大幅減点を受けます
  • 配点は非公開で、土台になるのはあくまで事業計画です。加点は計画が整ったうえでの上乗せと考える必要があります

どの加点が自社で取れるのか、賃上げの加点を取るべきかどうかは、事業の内容と資金計画によって答えが変わります。計画の段階からご相談ください。


出典(2026年10月22日確認)