持続化補助金の採択を左右するのが、電子申請システムで作成する経営計画兼補助事業計画①(様式2)です。
「何を書けばいいのかわからない」というご相談をよくいただきますが、実は審査で何が見られるかは公募要領に公開されています。文章術の問題ではなく、公開されている審査の観点に一つずつ答えていくのが最短ルートです。
この記事では、第20回公募要領の「審査の観点」を読み解きながら、経営計画書に何をどう書くべきかを整理します。
前提:審査は書類だけで決まります
まず押さえておきたいのが、審査の進み方です。公募要領には次のように書かれています。
- 採択審査は、有識者等で構成される審査委員会が非公開で提出資料により行う
- 提案内容に関するヒアリングは実施しない
- 採択審査結果の内容についての問い合わせには応じられない
つまり、提案内容について書類に書いていないことは、審査の場で補足できません。「言えばわかってもらえる」ことも、「見てもらえばわかる」ことも、書面に落とし込めていなければ評価の対象になりません。ここが、口頭審査のある省力化投資補助金などとの大きな違いです。
なお、これは提案内容についてのヒアリングがないという意味です。不当な支援料の請求を防止する観点から、第三者の支援者に対してヒアリングや現地調査が行われる場合はあると公募要領に記載されています。
まず「基礎審査」で落ちないこと
公募要領は審査の観点を基礎審査・計画審査・加点審査の3つに分けています。基礎審査は、要件を満たさない場合にその提案が失格とされる関門で、次の4つが挙げられています。
- 必要な提出資料がすべて提出されていること
- 補助対象者・補助対象事業・補助率および補助上限額等・補助対象経費の要件および記載内容に合致すること
- 補助事業を遂行するために必要な能力を有すること
- 小規模事業者が主体的に活動し、その技術やノウハウ等を基にした取組であること
見落とされやすいのが3と4です。この点について、公募要領の注意事項はさらに踏み込んだ書き方をしています。
本補助金事業は、小規模事業者が自ら自社の経営を見つめ直し、経営計画を策定した上で行う販路開拓の取組を支援するものです。このため、事業者自らが検討しているような記載が見られない場合や、自らが検討していなかったことが発覚した場合、評価に関わらず不採択・交付決定取消となります。
外部の業者に丸投げして作った計画は、内容の良し悪し以前に不採択になり得るということです。「補助金が取りやすい取り組み」から発想するのではなく、自社が実際に持っているものから発想する必要があります。
補助対象経費の要件は補助金の対象経費とは?もご覧ください。
計画審査の4つの観点と、書くべきこと
計画審査では、次の4項目で加点審査が行われ、総合的な評価が高いものから順に採択されます。公募要領の問いかけをそのまま引用しながら見ていきます。
① 自社の経営状況分析の妥当性
自社の経営状況を適切に把握し、自社の製品・サービスや自社の強みや弱みも適切に把握しているか。
ポイントは弱みも書くことです。強みだけを並べた計画書をよく見かけますが、審査項目は強みと弱みの両方を挙げています。弱みを正直に書いたうえで、それを補う取り組みとして補助事業を位置づけると、次の②③との一貫性が生まれます。
事業内容・主力商品・客層・売上構成などは、初めて読む審査員が自社を知らない前提で書きます。
② 経営方針・目標と今後のプランの適切性
経営方針・目標と今後のプランは、自社の強みや弱みを踏まえており、売上高・売上総利益の増加を目指すものとなっているか。 経営方針・目標と今後のプランは、対象とする市場(商圏)や顧客のニーズを捉えたものとなっており、売上高・売上総利益の増加を目指すものとなっているか。
ここで求められているのは、①で分析した強み・弱みと地続きの方針であることと、対象とする市場(商圏)と顧客ニーズを具体的に捉えていることです。
「地域の高齢化が進んでいる」といった一般論ではなく、自社の商圏で何が起きているか、その中で誰に何を売るのかまで落とし込みます。
③ 補助事業計画の有効性
4つの観点のなかでもっとも問いの数が多い項目で、5つの問いが並んでいます。
補助事業計画の効果は客観的事実に基づいて目標の設定がされており、売上高・売上総利益の増加を目指すものとなっているか。 補助事業計画は具体的かつ客観的事実に基づいており、当該小規模事業者にとって実現可能性が高いものとなっているか。また、販路開拓を通じて売上高・売上総利益の増加を目指すものとして、経営計画の今後の方針・目標を達成するために必要かつ有効なものか。 補助事業計画には、技術やノウハウ、アイディアに基づき、ターゲットとする顧客や市場にとって、新たな価値を生み出す商品、サービス、又はそれらの提供方法を有しており、客観的事実に基づいた売上高・売上総利益の増加を見込める取組となっているか。 補助事業計画には、デジタル技術を有効的に活用する取組が見られるか。 補助事業により取得した資産について、補助事業終了後も継続して使用し事業展開に役立てることが明確になっているか。
読み取れることが4つあります。
「客観的事実」という言葉が3回登場します。 見込み客数、来店数、単価、商圏人口、これまでの実績など、根拠となる数字を示すことが繰り返し求められています。「〜と思われる」「〜が期待できる」だけで組み立てた計画は、この観点で評価されにくくなります。
「新たな価値」が問われています。 単に設備を新しくする、広告を出すというだけでなく、ターゲットとする顧客にとって何が新しくなるのかを書く必要があります。
デジタル技術の活用が明示的な審査項目です。 予約システム、キャッシュレス決済、SNSやECの活用など、取り組みの中にデジタル要素があるなら必ず書きましょう。
補助事業終了後の使い道まで書きます。 導入した設備を事業終了後も継続して使い、事業展開に役立てることが明確かどうかが見られています。
④ 積算の透明・適切性
補助事業計画に合致した事業実施に必要なものとなっているか。 事業費の計上・積算が正確・明確で、真に必要な金額が計上されているか。
計画の内容と経費が対応していることが必要です。計画本文で触れていない設備が経費に計上されている、逆に計画で重要だと書いた取り組みに経費が積まれていない、という不整合は避けます。「一式」でまとめず、内訳がわかる形にしましょう。
なお経費の明細は、様式2とは別の補助事業計画②(様式3)に記載します。両者の内容が食い違わないよう、あわせて確認してください。
繰り返し登場するキーワードに注目する
審査の観点を通して読むと、「売上高・売上総利益の増加」が5回、「客観的事実」が3回登場します。
これは、この2つが評価の軸であることの表れと考えてよいでしょう。逆にいえば、どれだけ丁寧に書いても、売上や粗利の増加につながる筋道が見えない計画や、数字の裏づけがない計画は評価されにくいということです。
書き終えたら、「この計画は売上高・売上総利益をどう増やすのか」「その根拠は何か」に、計画書の中の文章だけで答えられるかを確認してみてください。
加点は「2種類まで」です
加点審査では、【重点政策加点】と【政策加点】からそれぞれ1種類、合計2種類までを選択できます。
ここに落とし穴があります。公募要領には次のように書かれています。
【重点政策加点】、【政策加点】から2種類以上を選択された場合には、加点審査の対象となりませんので、お間違えのないようご注意ください。
「それぞれ1種類、合計2種類まで」という前段とあわせて読むと、同じ区分から2つ以上を選ぶと加点審査の対象外になるという趣旨と考えられます。「該当しそうなものを全部選んでおこう」という発想は避けてください。
| 区分 | 主な加点項目 |
|---|---|
| 重点政策加点(1つまで) | 赤字賃上げ加点、事業環境変化加点、東日本大震災加点、くるみん・えるぼし加点、健康経営優良法人加点 |
| 政策加点(1つまで) | 賃金引上げ加点、地方創生型加点、経営力向上計画加点、事業承継加点、過疎地域加点、一般事業主行動計画策定加点、後継者支援加点、小規模事業者卒業加点、事業継続力強化計画策定加点、令和6年能登半島地震等に伴う加点、地域別最低賃金引上げ加点 |
選ぶ際は、加点のために新たな義務を負うことになる項目に注意してください。たとえば賃金引上げ加点は、1人当たり給与支給総額を年平均2.0%以上引き上げる目標を設定し、交付申請時までに全ての従業員または従業員代表者と役員に対して表明したうえで、実績報告時点で達成することが必要です。満たさない場合は、交付決定後であっても補助金は交付されません。あわせて、補助事業終了予定日を補助事業実施期限日である2028年3月31日に設定する必要もあります。小規模事業者卒業加点も同様に、達成できなければ交付されません。
なお、賃金引上げ特例のうち赤字事業者を希望した場合、重点政策加点の赤字賃上げ加点と政策加点の賃金引上げ加点はいずれも自動的に適用されます。
加点項目のなかには認定書や証明書の写しの提出が必要なものがあり、項目ごとに定められた基準日や締切までに認定等を受けていなければ対象になりません(様式2での選択や入力だけで足りる項目もあります)。手続きに時間がかかるものもあるため、早めの確認をおすすめします。
過去に採択されたことがある場合
過去に中小企業生産性革命推進事業の持続化補助金で採択を受け、補助事業を実施したことがある事業者には、追加のルールがあります。
- 過去に実施した補助事業と異なる事業であることを様式2の所定の欄に記載する必要があります
- 過去と同じ事業と見受けられる場合は不採択となり、採択後に判明した場合は遡って採択が取り消されます
- 過去の実施回の結果を踏まえた計画になっているか、明確に異なる新たな事業かという観点でも審査されます
- より多くの事業者が実施できるよう、過去の補助事業(全国対象)の実施回数等に応じて段階的な減点調整が行われます
「前回と同じ内容で出し直す」という進め方は成り立たない、ということです。
作成を進めるうえで知っておきたいこと
商工会・商工会議所との関わりが前提の制度です。 申請には地域の商工会・商工会議所が発行する事業支援計画書(様式4)が必要で、社外の代理人のみで相談や様式4の発行依頼を行うことはできません。事業者自身が関与する必要があります。
様式4の発行受付締切は、申請締切より前に設定されています。 第20回公募では申請締切が2026年12月15日17:00であるのに対し、様式4の発行受付締切は12月4日です。締切以降の発行依頼はいかなる理由があってもできず、補助対象者の要件を満たしていないと判断される場合も発行されません。
第三者の支援を受けた場合は、必ず申請時に申告してください。 公募要領は、支援料金の支払いの有無にかかわらず第三者の支援を受けているにもかかわらず、様式2の確認事項でその相手方および支援に係る金額(着手金・成功報酬その他名目を問わない)を記載しなかった場合、虚偽の報告として不採択・交付決定取消となると定めています。あわせて、提供するサービスの内容とかい離した高額なアドバイス料金を請求する業者への注意も明記されています。
創業型を検討している方へ。 創業型では、特定創業支援等事業で策定した創業計画書等の内容を踏まえた補助事業計画になっているかも評価の観点とされています(策定していない場合でも、それを理由とした不採択や減点はありません)。なお一般型と創業型の重複申請はできません。詳しくは持続化補助金<創業型>をご覧ください。
制度の全体像は小規模事業者持続化補助金とは?で解説しています。
まとめ
持続化補助金の経営計画書は、うまい文章を書く作業ではなく、公開されている審査の観点に一つずつ答えていく作業です。
書き上げたら、次の順で読み返してみてください。
- 基礎審査の4項目を満たしているか(とくに自社の技術・ノウハウに基づく取組になっているか)
- 強みだけでなく弱みも書けているか
- 売上高・売上総利益の増加への筋道が通っているか
- その根拠に客観的な数字があるか
- デジタル技術の活用に触れているか
- 経費と計画の内容が対応しているか
- 加点は2種類までに絞れているか
審査はヒアリングなしの書面一発勝負です。だからこそ、公開されている観点に沿って準備すれば、やるべきことは明確になります。
「自社の取り組みがどの観点に当てはまるのか」「どの加点を選ぶべきか」といった段階のご相談も歓迎です。お気軽にお問い合わせください。
出典(2026年8月11日確認)
