中小企業省力化投資補助金(一般型)は、カタログ製品をそのまま導入するのではなく、自社の課題に合わせて設計・構成した設備やシステムを導入するための補助金です。この制度で最初につまずきやすいのが、「オーダーメイド設備」という考え方です。

「ロボットを1台買いたい」「このパッケージソフトを入れたい」という計画は、そのままでは対象になりません。一方で、既製品の組み合わせであっても対象になる場合があります。この記事では、第8回公募要領(2026年8月・2026年9月18日改訂)に基づいて、何が「オーダーメイド」とされ、何が対象外になるのかを整理します。

制度全体(補助上限額・補助率・賃上げ要件・カタログ注文型との違い)については、省力化投資補助金とは?カタログ注文型と一般型の違いを解説をご覧ください。

公募要領の「オーダーメイド設備」の定義

公募要領は、一般型の目的を「人手不足に悩む中小企業等が IoT・ロボット等の人手不足解消に効果があるデジタル技術等を活用した専用設備を導入するための経費の一部を補助する」ことと定めています。この「専用設備」が、公募要領でオーダーメイド設備と呼ばれているものです。

定義は次のとおりです。

ICTやIoT、AI、ロボット、センサー等を活用し、単一もしくは複数の生産工程を自動化するために、外部のシステムインテグレータ(SIer)との連携などを通じて、事業者の個々の業務に応じて専用で設計された機械装置やシステム(ロボットシステム等)

ポイントは3つに分解できます。

  1. デジタル技術を使っている(ICT・IoT・AI・ロボット・センサー等)
  2. 工程を自動化する(単一でも複数でもよい)
  3. 自社の業務に合わせて専用で設計されている(SIerとの連携などによる)

つまり「高価な設備」や「最新の設備」であることが条件なのではなく、自社の工程・レイアウト・業務の流れに合わせて設計されているかが問われます。

なぜ「オーダーメイド」が求められるのか

省力化投資補助金には、カタログ注文型と一般型の2つがあります。公募要領は、一般型の申請を検討する前にカタログ注文型の製品カタログを必ず確認するよう求めています。カタログ掲載製品は国が省力化効果を認めたものであり、申請が迅速かつ簡易だからです。

そのうえで一般型は、次の点を総合的に審査するとしています。

  • 申請する製品でどのような省力化効果が見込めるか
  • 省力化効果により付加価値の向上がどの程度見込めるか
  • 事業状況に見合った投資か
  • 個別の課題に対して作業工程や事業所の構造・レイアウト等に合わせて、機能、構造、性能等が一品一様で設計・開発された機械装置・システムの導入をする事業計画になっているか
  • 革新性がどれだけあるか

公募要領自身が「カタログ注文型よりも審査項目が多い」と明記しています。既製品で足りるならカタログ注文型、既製品では自社の課題を解決できないから専用設計が必要、という切り分けが制度の前提です。

対象外になる事業:汎用設備・パッケージソフトの単体導入

公募要領の「補助対象外となる事業」には、次の項目が明記されています。

汎用設備、パッケージソフト等のオーダーメイド性の無い設備・システムを単体で導入する事業

補助事業要件の側でも「単に汎用設備を単体で導入する事業については、本事業の対象とはなりません」と重ねて書かれています。汎用の工作機械を1台、市販の業務ソフトを1本、という計画は、どれだけ省力化効果があっても一般型の対象にはなりません。

あわせて、次の事業も対象外です。オーダーメイド設備の計画を立てるときに関わりやすいものだけ挙げます。

  • 事業の主たる課題の解決そのものを他者へ外注又は委託する事業(公募要領は外注費として「専用設備の設計等の一部を外注する場合の経費」を認めています。この記載から、設計の一部をSIerに外注することと、課題解決そのものを丸ごと外注することは区別されていると読み取れます)
  • 将来的な対外向け販売を前提とする設備・システム等の開発を含む事業
  • 利用者に有償で提供する設備、システム、サービス等の開発・改良を含む事業

自社の省力化のために作るシステムは対象ですが、それを商品として売る計画が混ざると対象外になります。

汎用設備でも「オーダーメイド」とみなされる2つの条件

ここが実務上いちばん重要です。公募要領は、汎用設備であっても次のいずれかに当てはまる場合はオーダーメイド設備とみなし、対象になるとしています。

条件 公募要領の記載
① 構成が導入環境に応じて変わる 事業者の導入環境に応じて周辺機器や構成する機器の数、搭載する機能等が変わる場合
② 複数を組み合わせる 汎用設備を組み合わせて導入することでより高い省力化効果や付加価値を生み出すことが可能である場合

対象外の項目にも同じ趣旨の注記があり、「汎用設備やパッケージソフトを複数組み合わせることでより高い省力化効果や付加価値を生み出す場合は対象となります」とされています。

考え方を一般的な例で示すと、次のような違いです(公募要領の条件を当てはめた説明用の例であり、公募要領に記載された事例や特定の申請事例ではありません。実際に対象になるかは個別の審査で判断されます)。

  • 汎用のロボットアームを1台買って据え付ける → 単体導入のため対象外
  • 汎用のロボットアームに、自社の製品形状に合わせたハンドとセンサーを組み合わせ、既存の搬送ラインと連動するようSIerが設計・構築する → ①と②に当てはまる計画として説明しやすい
  • 市販の在庫管理パッケージを1本導入する → 単体導入のため対象外
  • 在庫管理パッケージを、現場のバーコード端末・自動倉庫・受発注システムと連携させ、自社の業務フローに合わせて構成する → 複数の組み合わせとして説明しやすい

「対象になる」と言い切れるかどうかは、事業計画書の中で①②に当てはまることを具体的に示せるかにかかっています。設備の名前だけでは判断されません。

カタログ掲載製品を一般型で使う場合

カタログ注文型の製品カタログに登録されているカテゴリに該当する製品を一般型で導入する場合、公募要領は「省力化効果が十分に見込める設備を導入する計画であると認められるため、審査の際にも一部考慮する」としています。

ただし条件があります。カタログ掲載製品をそのまま導入するのではなく、導入環境に応じて周辺機器や構成機器の数、搭載機能が変わる場合や、省力化に資する汎用設備を複数組み合わせる場合に限って、一般型の対象になります。カタログ製品をそのまま1台入れたいのであれば、カタログ注文型で申請するのが制度の想定です。

審査で「オーダーメイド性」はどう見られるか

書面審査の「技術面」は、次の4つの観点で評価されます。

  1. 省力化指数が高い取組であり、算出根拠が妥当か
  2. 投資回収期間が短い取組であり、算出根拠が妥当か
  3. 付加価値額の年平均成長率が大きく、算出根拠が妥当か
  4. オーダーメイド設備等の導入を行う事業計画であることが示されているか。汎用設備であっても、導入環境に応じて構成が変わることや、組み合わせて複数導入することでより高い省力化効果や付加価値を生み出すことが示されているか

4つ目がオーダーメイド性です。公募要領の文言どおり、汎用設備の組み合わせであれば「なぜその組み合わせでより高い効果が出るのか」を示す必要があります。

また、ソフトウェア投資やシステム開発など、書面では計画の詳細を理解しにくい案件を中心に、オンラインの口頭審査(1事業者30分程度)が行われることがあります。対応できるのは申請事業者自身(個人事業主本人・法人代表者・役員。社外取締役を除く)で、同席できるのは申請時に申請担当者欄に記載した役員または従業員1名までです。事業計画書作成支援者やコンサルタントの同席は認められていません。システムの構成や設計の考え方を、経営者自身が説明できる状態にしておく必要があります。

事業計画書に何を書くか

公募要領は、事業計画書(その1)で次の記載を求めています。オーダーメイド性に関わる部分を抜き出します。

  • 今回の補助事業で機械装置等を取得しなければならない必要性
  • 課題を解決するため、不可欠な工程ごとの開発内容、材料や機械装置等を明確にしたうえでの具体的な目標と達成手段(必要に応じて図表や写真)
  • 事業期間内に投資する機械装置等の型番、取得時期や技術の導入時期の詳細なスケジュール
  • 設備・システム導入により、生産・業務プロセスやサービス提供方法がどの程度省力化されるか

参考様式では「2-1 設備導入による業務プロセスや配置のビフォーアフター」という項目が用意されています。現状の工程と導入後の工程を並べて、どの作業が自動化され、どこに専用設計が必要なのかを示す構成です。

事業計画書(その3)の数値計画についても、「省力化指数」「投資回収期間」「付加価値額」「オーダーメイド設備」に関する計画は算出根拠を記載または別途提出するよう求められています。

経費の面から見たオーダーメイド設備

専用設計を伴う投資では、設備本体の代金以外にも経費が発生します。公募要領の経費区分でどう扱われるかを整理します。

経費区分 内容 上限
機械装置・システム構築費(必須) 機械装置・工具の購入・製作・借用、専用ソフトウェア・情報システムの購入・構築・借用、これらと一体の改良・据付け 単価50万円(税抜)以上の設備投資が必ず1つ以上必要
外注費 専用設備の設計等の一部を外注する経費。機械装置等の製作を外注する場合は機械装置・システム構築費に計上 補助対象経費総額(税抜)の1/2
専門家経費 専門家のコンサルティング業務等。導入する設備の設計時のセキュリティ設計に関するアドバイス等を含む 1日5万円、補助対象経費総額(税抜)の1/2
技術導入費 知的財産権等の導入に要する経費 補助対象経費総額(税抜)の1/3
知的財産権等関連経費 特許権等の取得に要する弁理士の手続代行費用など 補助対象経費総額(税抜)の1/3
クラウドサービス利用費 専ら補助事業のために利用するクラウドサービス等の利用費 補助事業実施期間中の分のみ

機械装置・システム構築費以外の経費には、合計で総額500万円(税抜)の上限もあります。

実務上の注意点は次のとおりです。

  • システム構築費を計上する場合、採択後に見積書に加えて仕様書等の提出を求められることがあり、実績報告時には要件定義書または開発費用算出資料(作業単価・工数・担当者・勤務記録等)の提出が必要です。SIerと契約する前に、これらの書類が出せるかを確認しておく必要があります
  • 外注先との契約は書面で締結する必要があります。外注先に技術導入費・専門家経費を併せて支払うことはできません
  • 応募時に事業計画書の作成を支援した者は、専門家経費の対象外です
  • 事務用パソコンなど汎用性があり目的外使用になり得るものの購入費、設置場所の整備工事や基礎工事、中古品購入費は対象外です
  • 補助事業で導入したシステム等のサイバーセキュリティ対策に限り、ウイルス対策ソフトの購入費や脆弱性診断の費用は対象になります

対象経費の共通の考え方は補助金の対象経費とは?共通する3つの条件と制度で結論が変わる論点でも解説しています。

採択後に求められること

オーダーメイド設備ならではの採択後の義務もあります。

  • システム構築費を計上した場合、発注先の事業者と3〜5年の保守・メンテナンス契約を締結する必要があります(保守費用自体は補助対象外)
  • 導入した機械装置を対象とした保険または共済への加入が原則必須です(付保割合50%以上)
  • 補助金交付額の確定にあたり、中小機構および事務局による現地調査が行われます。補助対象設備や証憑類が確認できない場合、その設備の金額は補助対象になりません

専用設計の設備は、納品されたものが計画どおりかを現地で確認されます。計画書の記載と実際の構成がずれないよう、発注前に仕様を固めておくことが欠かせません。

まとめ

一般型の「オーダーメイド設備」は、自社の工程に合わせて専用で設計された機械装置やシステムを指します。汎用設備やパッケージソフトを単体で入れる計画は対象外ですが、導入環境に応じて構成が変わる場合や、複数を組み合わせてより高い効果を出す場合は、汎用設備でもオーダーメイド設備とみなされます。

申請では、設備の名前ではなく、なぜその構成が自社に必要で、どの工程がどれだけ省力化されるのかを事業計画書で示すことが求められます。

「この設備は一般型の対象になるのか」「カタログ注文型と一般型のどちらで申請すべきか」という段階からご相談いただけます。加点項目の取り方については、省力化投資補助金(一般型)の加点項目と減点を解説もあわせてご覧ください。


出典(2026年10月22日確認)