補助金の申請で最初につまずきやすいのが、この費用は補助の対象になるのかという判断です。せっかく採択されても、対象外の経費を計上していれば交付決定の段階で減額され、想定していた金額が受け取れないことがあります。

対象経費には多くの制度に共通する骨格がある一方で、制度によって結論が正反対になる論点もあります。この記事では、小規模事業者持続化補助金・中小企業省力化投資補助金・新事業進出ものづくり商業サービス補助金の公募要領を突き合わせて、その両方を整理します。

対象経費の3つの共通条件

3つの補助金はいずれも、次の3つを満たす経費を対象としています。表現の厳しさには差がありますが、骨格は共通です。

条件 内容
① 目的との結びつき 補助事業の遂行に必要なものと明確に特定できる経費であること
② タイミング 交付決定日以降に発注・契約し、補助事業実施期間内に支払いが完了した経費であること
③ 証明できること 証拠書類によって支払金額が確認でき、価格の妥当性を示せる経費であること

省力化投資補助金と新事業進出ものづくり補助金では、①がさらに厳しく、専ら補助事業のために使用されることが求められます。

①「専ら補助事業のために」使うものであること

新事業進出ものづくり補助金の公募要領は、対象外経費の先頭に「既存事業に活用する経費、既存事業と補助事業が共用される経費等、専ら補助事業のために使用されると認められない経費」を挙げています。省力化投資補助金でも、クラウドサービス利用費について「自社の他事業と共有する場合は補助対象となりません」と明記されています。

「どうせ使うものだから、この機会に補助金で買っておこう」という発想は通りません。申請する事業のためだけに使うと説明できるかが出発点です。

②「交付決定日以降」に発注し、期間内に支払いを終えること

もっとも事故が多いのがタイミングです。ポイントは2つあります。

交付決定より前の発注・契約・支払いは対象外です。 省力化投資補助金の公募要領には「いかなる理由であっても事前着手は認められません」と書かれています。採択通知が届いた時点ではまだ交付決定前であることが多く、ここで先に発注してしまう例が後を絶ちません。

支払いまでを補助事業実施期間内に終える必要があります。 納品が期間内でも、支払いが期間を過ぎれば対象外です。新事業進出ものづくり補助金では、分割払いで一部でも期間内に完了していない支払いがある場合、その契約に含まれるすべての経費が対象外になるとされています。

補助事業の期間の考え方はものづくり補助金の交付申請・実績報告でつまずかないためにでも解説しています。

③ 証拠書類で説明できること

補助金は、見積依頼書・見積書・注文書・契約書・納品書・請求書・振込記録という一連の流れが日付順に説明できる状態を求めます。

一定額以上の発注では相見積もりが必要で、必要な社数は制度によって違います

補助金 相見積もりが必要になる基準
小規模事業者持続化補助金 発注総額(1件あたり)50万円超(税込)で2者以上
省力化投資補助金(一般型) 契約先・発注先1件あたりの見積額の合計50万円以上(税抜)で2者以上
新事業進出ものづくり補助金 契約(発注)先1件あたりの見積額の合計50万円以上(税抜)で3者以上。広告宣伝・販売促進費は金額に関わらず複数者から

「システム開発一式」のような内訳のない見積書は認められません。

多くの制度で対象外になる経費

3つの補助金すべてで対象外とされているものを整理すると、次のようになります。

分類 具体例
汎用性が高いもの 事務用パソコン・タブレット・スマートフォン・カメラ・プリンタ・文書作成ソフト・家具
経常的な経費 事務所の家賃・保証金・敷金・仲介手数料・水道光熱費、通信費
換金性の高いもの 商品券・金券
接待関連 飲食、奢侈、娯楽、接待の費用
手数料 振込手数料、両替手数料
士業への一般的な費用 税務申告・決算書作成のための税理士等への費用、訴訟のための弁護士費用
補助金の手続費用 応募書類・実績報告書など事務局に提出する書類の作成・提出に係る費用

このうち特に相談が多いのがパソコンです。「業務効率化のためにパソコンを買いたい」というご相談はよくいただきますが、汎用性が高く目的外使用になり得るものとして対象外とされています。ただし省力化投資補助金では、汎用品の対象外規定に「本事業でのみ使用が可能なものを除く」という留保があり、機械装置・システム構築費の対象例には電子計算機やデジタル複合機も挙げられています。専ら補助事業のために使うと説明できるかどうかで結論が変わり得る部分です。

なお、事務所家賃についても持続化補助金には例外があり、既存の事務所賃料ではなく新たな販路開拓の取組の一環として新たに事務所等を賃借する場合は対象となる場合があるとされています。

制度によって結論が変わる論点

ここが実務でもっとも注意が必要な部分です。他社の事例や過去の経験をそのまま当てはめると判断を誤ります。

消費税

  • 持続化補助金: 原則として対象外ですが、消費税等を対象経費に含めて交付決定を受けた免税事業者・簡易課税事業者・2割特例の申請者は対象になります。旅費に係る出入国税も対象です
  • 省力化投資補助金・新事業進出ものづくり補助金: 補助金交付申請額の算定段階で消費税等を除外します

旅費

  • 持続化補助金: 「旅費」という補助対象経費の区分があり、補助事業計画に基づく販路開拓のための出張費(宿泊代・電車賃・航空券代など)が対象になります
  • 省力化投資補助金・新事業進出ものづくり補助金: 自社の人件費・旅費は対象外です(新事業進出ものづくり補助金のグローバル枠の海外旅費は別枠で対象)

設備の単価要件

補助金 単価に関する要件
小規模事業者持続化補助金 下限なし(単価50万円税抜以上は処分制限財産になる)
省力化投資補助金 一般型は少なくとも1件、単価50万円以上(税抜)の機械装置等の設備投資が必須(借用に要する経費を除く)。カタログ注文型は購入する製品本体価格が単価50万円以上
新事業進出ものづくり補助金 補助対象となる機械装置等は単価10万円以上(税抜)

中古品

補助金 扱い
小規模事業者持続化補助金 単価50万円未満(税抜)かつ2者以上の中古品販売事業者からの見積があれば対象。個人からの購入やオークションは不可
省力化投資補助金 対象外
新事業進出ものづくり補助金 3者以上の古物商の許可を得ている中古品流通事業者から型式・年式が記載された相見積もりを取得している場合などは対象

支払方法

  • 持続化補助金: クレジットカード払いも可能ですが、分割払い・リボ払いを含め、金融機関からの引き落としが補助事業期間内に完了していることが必要です。1取引10万円超(税抜)の現金支払いは、旅費や代金引換限定のサービス等を除き認められません
  • 省力化投資補助金・新事業進出ものづくり補助金: 銀行振込での確認が前提です。カードでしか支払えない経費がある場合を除き、支払いのしやすさを理由にクレジットカードを使うことは認められず、代行振込も不可とされています。新事業進出ものづくり補助金では、PayPayやPayPalなどの決済サービスは銀行振込とみなされません

自動車と建物

自動車について、キッチンカー・フォークリフト・除雪車は持続化補助金では対象外経費として明記されています。ただし同じ持続化補助金でも、「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」の「機械及び装置」区分に該当するもの(例:ブルドーザー、パワーショベルその他の自走式作業用機械設備)は、対象となる経費例として挙げられています。省力化投資補助金・新事業進出ものづくり補助金も同様に、「機械及び装置」に該当するものは対象、「車両及び運搬具」「船舶」「航空機」に該当するものは対象外という整理です。つまり車種名ではなく、税法上どの区分に入るかで結論が決まります

建物についても差があります。土地・建物の購入費はいずれの制度でも対象外ですが、新事業進出ものづくり補助金には「建物費」という経費区分があり、生産施設・加工施設・販売施設などの建設・改修は対象です(単なる購入や賃貸は対象外)。新事業進出枠・グローバル枠では、機械装置・システム構築費と建物費のいずれかが必須とされています。

なお簡易建物(コンテナ・ビニールハウス等)の購入費は省力化投資補助金・新事業進出ものづくり補助金では対象外ですが、持続化補助金では外気分断性・土地への定着性・用途性の3要件で判定され、コンクリートブロックの上に市販の簡易物置やコンテナを乗せただけの状態のものは不動産の取得に該当しないとされています。

経費区分ごとの上限に注意

「補助上限額まで自由に使える」わけではありません。多くの補助金は経費区分ごとに上限を設けています。上限が補助金額ベースか対象経費ベースかも制度によって違うため、あわせて確認してください。

補助金 区分ごとの主な上限
小規模事業者持続化補助金 広報費・ウェブサイト関連費は補助金交付申請額でそれぞれ30万円(税込)。いずれも単独では申請できない
省力化投資補助金(一般型) 機械装置・システム構築費以外の対象経費の合計500万円(税抜)。技術導入費・知的財産権等関連経費は対象経費総額の1/3、外注費・専門家経費は1/2
新事業進出ものづくり補助金 対象経費総額に対して技術導入費・知的財産権等関連経費は1/3、外注費は1/4、専門家経費は1/5。広告宣伝・販売促進費は売上見込み額に基づく計算式。建物費に割合上限はない

たとえば持続化補助金で「チラシとホームページに集中投資したい」という計画を立てても、広報費・ウェブサイト関連費として申請できる補助金額はそれぞれ30万円が上限です。補助率2/3で逆算すると、対象経費ベースではそれぞれ45万円程度が実質的な上限になります。加えて、一般型 通常枠の補助上限額そのものが50万円(特例適用時を除く)であることにも注意が必要です。

対象外経費を削ったら下限割れ、という事故

見落としやすいのが補助下限額です。新事業進出ものづくり補助金では、革新的新製品・サービス枠が100万円、新事業進出枠・グローバル枠が750万円の下限を設けており、減額によって下限を下回ると採択取消になり得ます。省力化投資補助金のカタログ注文型にも、補助額25万円未満の申請はできないという定めがあります。

対象外経費を削った結果、補助金額が下限を割るという事態を避けるため、計画段階で対象経費の判定を済ませておくことが重要です。

省力化投資補助金は類型で構造が違います

同じ補助金でも、省力化投資補助金のカタログ注文型は対象経費の構造がまったく違います。対象になるのは製品本体価格と導入経費(製品本体価格の2割が上限)の2つだけで、委託・外注費や移動交通費・宿泊費はいずれも対象外です。この記事の他の記述は主に一般型を前提としています。

各制度の詳細は、小規模事業者持続化補助金とは?省力化投資補助金とは?新事業進出補助金・ものづくり補助金とは?でそれぞれ解説しています。

補助金の申請費用そのものは対象になりません

3つの補助金いずれも、補助金の応募書類・実績報告書などを作成・提出するための費用を対象外としています。新事業進出ものづくり補助金では「事業者が行うべき手続きの代行費用」、省力化投資補助金では「補助事業者の通常業務に対する代行作業費用」も対象外とされています。

専門家経費という区分がある補助金でも、事業計画書の作成を支援した者への費用は専門家経費の対象外です。申請支援を受ける場合、その費用は自己負担になると理解しておく必要があります。

このほか、購入額の一部が実質的に還流するキャッシュバックや値引き分を証憑に反映しない取引は、証憑の金額と実際の支払額が一致しなくなるため、どの補助金でも禁止されています。詳しくは補助金の不正受給とは?をご覧ください。

買っただけでは足りません

意外に見落とされるのが、設備を導入しただけでは対象にならないという点です。

持続化補助金の公募要領では、機械装置を購入したものの補助事業終了までにそれを使用して計画に記載した取り組みを行っていない場合、その購入費は補助対象外になるとされています。ホームページを作ったが公開していない、広告を掲載する契約をしたが掲載されていない、といった場合も同じです。新事業進出ものづくり補助金でも「単に建物の建設や設備の導入が完了しただけでは、補助事業の完了とはみなしません」と明記されています。

実際に使い、その事実を実績報告で示せることまでが求められます。

判断に迷ったときの考え方

  • まずその補助金の公募要領の対象経費一覧を確認する(他の補助金の情報は当てになりません)
  • 「専ら補助事業のために使うか」「交付決定後に発注できるか」「証拠書類が揃うか」の3点で自己点検する
  • それでも迷う場合は、自己判断せず事務局に確認する。なお持続化補助金は、計画作成の相談や様式4の発行を地域の商工会・商工会議所と進める制度設計になっており、社外の代理人のみで相談や発行依頼を行うことはできません
  • 対象になるか微妙な経費は、計上せずに自己負担とする判断も選択肢です。対象外経費が大半を占める計画は、不採択や採択取消の理由にもなり得ます

まとめ

補助金の対象経費は、目的との結びつき・タイミング・証明できることという3条件で考えると整理しやすくなります。パソコンなどの汎用品、経常的な経費、接待費、補助金の申請費用は、多くの制度で共通して対象外です。

一方で、消費税・旅費・中古品・支払方法・単価要件は制度によって結論が変わります。同じ「中古の機械を導入したい」という相談でも、どの補助金で申請するかによって答えが正反対になります。投資計画を立てる段階で、使う予定の補助金の公募要領に当てて確認しておくことが、あとからの減額を防ぐ一番の対策です。

「この設備は対象になるのか」「どの補助金で申請すべきか」といった段階のご相談も歓迎です。お気軽にお問い合わせください。


出典(2026年8月10日確認)